日本語の編集をしていてよく直すパターン19選

ばるぼらさんと、ラムダノートの鹿野さんが、「日本語の校正・編集」という観点で「直すパターン」を挙げていらっしゃいました。だいたい同じことをやっているなぁ……と思ったので、乗っかりまして、自分でも列挙してみたいと思います。いくつ増えるかな。→4つ増えました。

注:この記事は「良い文章の書き方」ではなく、「編集や校正でどこを見ているか」のまとめです。

1. 順接の「が」が頻出する

順接の「が」は私も殲滅したい派です。逆接に受け取られる可能性を少しでも減らすためです。

2. 「も」を使いがち

なぜか割と登場する「も」。使い勝手がいいのかもしれません。「また、●●も~」という文章は「また、●●は~」に直してしまいがちです。

3. 「することができる」を使いがち

自分が書き手の時は書きがち! 「●●できる」または「可能動詞」に置き換えます。でも「愛することができる」を「愛せる」とするのは勇気が要りますね。

4. 途中で主語が入れ替わっている

私は「主述のねじれ」と呼んでいます。私に編集の基礎を教えてくれた人の受け売りの言葉です。長い一文で複数の人物が登場する場合などにうっかり出てきます。複文を解消してなるべく短い文章にしていくと解消しやすいと思います。

5. 意味のまとまりで「、」を打たない

上記の教えてくれた人は「読点はセンス」と言っていました。読点には正解がないので本当に難しいですね。発話している区切りと文章で書いている区切りは違うケースが多いし、読点が多すぎなければまあまあ通じてしまうので……。とはいえ、あまりに読点が少ない場合は打ちますし、多すぎる時は文区切り位置を変えるなどして減らします。

6. 列挙するときに余計な語句を入れてくる

「AやB、C、D」と並列にする場合の「や」は冒頭の1回、みたいなことは守っています。「AにB、CにD」みたいな並列もあるので難しいですね……。なかぐろ連発の場合は箇条書きに直すというやり方があります。

7. そこ漢字?ってところが漢字

ぱっと思いつくのは「色んな」「~する事」「~のような物」「無い」「有る」「そういう所だぞ!」あたりでしょうか。もっとたくさんあるな。

8. 同じ表現・言葉が近い位置に出てくる

同じ言葉が近い位置にあるとなぜかかっこ悪く見えます……という解説はあんまり親切ではないですね。同じならまとめたり消したりしてしまってよいし、どうしても似たニュアンスの用語を使いたい場合は類語に置き換えるなどもよいと思います。「同じ言い回しが意図せず遠い位置にある」場合もカットするか、言い換えます。

9. 表現がバラエティ豊かすぎる

文芸作品などは例外かと思いますが、一般的な文章においてレトリック(倒置、体言止め、比喩など)が多用されていると、意味が取りづらくなりがちです。いわゆる「紋切り型」の表現もここに入ると考えています。本当に「醍醐味」? 本当に「視線を落とした」? 本当に「今後の成り行きが注目される」?

10. 同じことを書いている&省略せずに書いている

8に近いけど、「違う文章で同じことを書いている」という意図ですね。びびってしまってつい残してしまった段落を丸ごとトルツメとか、段落2つをくっつけて表現をそぎ落とすとか、の対処法でクリアするケースが多いです。これは自分が書き手に回った時に結構やってしまう……。

A. 因果関係を示すために「ため」を使わない

順接の「が」と同じく、誤読される可能性が非常に高いので、出てくると言い換えを検討します。

B. 「の」でなくてもいい場所から「の」を追放する

真夏の夜の夢」問題……。「の」は可能な限り1回、どうしてもニュアンスを残す場合に「の」の連続は2回まで、とすることが多くあります。3回はいくらなんでも言い換え可能だろうと判定してしまいます。

C. 「イ形容詞+です」を避ける

「多いです」ここまでに登場してしまった。これは可能な限り避けたいのですが、口語を起こしている場合についついやっちゃう。

D. 「行う」を減らす

「行う」の前には必ず動詞が潜んでいると教わりました。行う、便利なんですよねえ……。「接触を行う」→「接触する」、「ヒアリングを行う」→「ヒアリングする」などなど。「実施する」に言い換えて逃げるという小ずるいパターンもあるにはあるんですが、ソリッドな方向にする方がだいたい文章は読みやすくなるので、推敲を行う方がベターですね。

E. 目的語の不足や、位置の修正

主語省略は日本語によくあるパターンで、1つ前の文章で主語があればその主語が次の文章の主語でもあるだろう、という意図で許容できるし、実際読めます。しかし、目的語がなぜか省略されてしまう場合が結構あります。発話している調子で文章を書くと、確かに目的語はあんまり出てこないのかもな……と思っています。目的語を編集で補う場合は、筆者の意図とずれている可能性があるため、「これで意図と合っているかどうか」を確認します。

イ. 「たりは複数」を守る

「見たり、聞いたり」のように、「~たり」は基本的に複数で使います。ただ、最近の辞書を読むと「強調の口語として使う」という用例があり、文章中でも許容されつつあるなと感じます。校正という観点で読む場合は赤を入れます。

ロ. 送りがなは本則で

送りがなの正しさは時代によって変わるので、何が本則(日本語として推奨される書き方)か、というのはその時々でしか判断できません。「行なう」と書いていた時代もありますが、2018年8月時点では「行う」と直します。送りがなが揺れるケースは結構たくさんあるので、こつこつ辞書に当たるしかありません。「癒やし」を「癒し」と書いているケースはかなりありまして、共同の記者ハンドブックを当たると「癒やし」という送りがなが書いてあるので、見つけたら無言で「や」を入れます。

ハ. 「ら抜き」はあんまり許容しない

「時代によって日本語は変わる」ので、そのうち「ら抜き」がきちんと定着する時代がやってきそうですが、私は現時点では「来れる」→「来られる」、「見れる」→「見られる」と直しています。可能と受け身どちらにも受け取れる場合は、言い換えを検討します。

ニ. アルファベットだけの固有名詞はとにかく調べる

以前こちらの記事にも書きました。「Github」「Youtube」「yahoo」などなど。タイトルに「日本語の編集」と書いていますが、Webで編集をしているとだいたいアルファベットオンリーの固有名詞にぶち当たる気がしています。かつて所属した会社のサービス名で今でもひたすら脳内でつっこんでいるのは「Livedoor」です。livedoorが正です。


スポーツ紙や有名人ブログなどで見かける、結婚を指す「入籍」という言葉の誤用も気になるのですが、「よく直す」パターンには入らないので含めていません。