#8 がんと闘った科学者の記録(文春文庫)

2022年1月1日から始めてみてどれくらい続くかなと思った「断捨離しない本」の紹介、予約投稿を駆使すると案外続くものだな……と思っていたのですが、ひとつ誤算がありました。本はたくさんあるのに「私は本当にこの本を断捨離せずにいられるのか?」という疑問が頭をよぎるのです。

特に積ん読にしてある本。読めていないけど持っておきたい本。読み切ったら売ってしまうかもしれない……と思うと「うかつに紹介できないな」と考えてしまうのです。処分できないことに悩む経験はしてきたけど、まさか持っておくことについても悩むとは思わなかった。

さて今回は「がんと闘った科学者の記録」です。

この本を紹介するのは結構難しいのですが、端的にまとめると、2008年7月にがんで亡くなった科学者の戸塚洋二さんが日記・随筆として書いていたブログを、立花隆さん(2021年4月に亡くなられました)が書籍として編集したもの、という本です。かなりメタな作りになっているのですが、もともとの文章が非常に読みやすいこと、立花隆さんによる補足が入っていることから、闘病記としても読めます。単なる闘病記だけではないのがややこしいところで、日記としてのブログがもとになっているので、日々の出来事、植物の話、科学と宗教の関わりの間に闘病のことが出てくるため、タイトル通り「科学者の記録」。ログを残す習慣のある科学者ならではの読み物だなと思います。

壮絶な闘病だったはずなのに、戸塚洋二さんの冷静で科学的な視点から読んでいくことで、淡々と最期の日に向かって読み続けてしまうのが怖いところです。今もこの文を書きながら何度も手を止めて読み返してしまっていました。