私の文字起こし(テープ起こし)の方法は「だいたい全部起こしてしまう」です

こんにちは、id:ayakoya/@ayako_m と申します。この記事は、「書き手と編み手の Advent Calendar 2019」の14日目の記事です。

この記事では、私が取材、あるいは編集する際の「文字起こし」の方法について書こうと思います。この内容に決めた時、記事を作る際の普通のステップについて書くことに及び腰になっていました。どうしても「編集者」としての職業柄なのか、もともとの職歴が全部“裏方”だったせいなのか、「自分自身からノウハウを発信する」ということに対してついつい構えてしまうのです。

ただ、このアドベントカレンダーの初日、id:mohri さんの記事のこの部分を読んで、「自分ではごく普通だと思っている」「けれどどうやら方法は多種多様らしい」ということをひとつ書こうと思いました。

編集者は自分が黒子だと考えていて、自分が表立って何かを発信することをあまり良いことだと考えていないようなところがある。無記名の記事をたくさん書いてきた職業ライターのひともそうなのかもしれない。記名で情報を公開すると、売名行為的に捉えられることがあり、つまらないツッコミを入れられることもある。それを嫌がって情報を公開したくないと考えることもある。それは面倒だ。


しかし、これはほんとに意識の持ち方だけの話なのではないかとおもっていて、そういった面倒なことがほんとに勝るのか? メリットはほんとうにないのか? 試しに、取材するときに必要なノウハウや、記事の構成について考えていることなどを情報共有しあってみたらどうだろう? という思いつきからアドベントカレンダーを立ててみたのです。

情報を必要としている者が自ら情報を発信する文化について - in between days

記事を作る際には「文字起こし(テープ起こし)」がつきものなのだが

さまざまな企画における取材で、音声を録音する人はかなり多いんじゃないかと思います。私は1回だけ、一切音声を残さずにメモを取るのみで素敵なインタビューを仕上げたのを見たことがあります。その方が職業ライターだったからなのかもしれないし、込み入った技術・IT系の記事じゃなかったから可能だったのかもしれません。とはいえ、同条件で私がメモからだけで記事を起こせるかというと不可能でした。

実際の取材で、「音声はちゃんと録っておいて、メモだけで起こす練習をしよう」と思って試みたことがあります。結果を先に言うと完全に無理でした。一方で、似たような内容をほぼメモ+補助として音声を使うことで起こせる人もいました。

複数人に聞いてみると、文字起こし(テープ起こし)という作業をどうやるか、かなり人によって異なるようでした(だいたいこれまで7~8人に聞いた結果)。「録音しない」という人はいませんでしたが、「全部起こす」まではやらない、という人は結構いました。

私はどうしているかというと「ほぼ全部起こす」

私は、手間はかかってしまうのですが、とにかくだいたい音声を文字に起こしています。

込み入った内容かどうか、話し手の話すスピード、取材時間などで左右されますが、あらためて考えてみたところ「起こす時は再生速度を70%~80%にする」「明らかに飛ばす・起こさないところも一応再生速度130%~150%で聞く」「だいたい実時間×3~4時間で終わる」という感じでやっています。早口な人の場合は同じ収録時間でも情報量がかなり違うので、再生速度を60%くらいにして、とにかく逐一書き起こす文字打ちマシンと化すこともあります。

雑談や移動など明らかに使わないところには、可能な限りTC(タイムコード)と「(使わない)」などをメモしておいて、その後二度と聞かなくてもいいようにします。これは私の最初の職業が映像系だったから単にキャプションを打つくせがついている、だけかもしれません。

無駄かもしれないけど……

音声を頭から聞き直して文字にするうちに、自分の脳内に「当日の取材の雰囲気・空気の流れ方」と「記事のざっくりした骨子」が広がった状態になります。インデックスするというか、マッピングというか。記憶の映像と撮った写真の順番もなんとなくインデックスされて、このシーンならこれ、と思い出せるようになります。

この辺から「人によってかなり違う」感じになると思うのですが、自分にはこの過程がないと次の「編集」に移れないらしいのです。この部分とこの部分を分けた方がいいか、まとめた方がいいか、まとめて言い直す方がいいか、順番はどうなると自然か or 引っかかりを作れるか、などなどの次の工程の効率が、この脳内インデックス作業によってだいぶ変わってくるなと感じました。

あえて雑談パートを低速で聞きながら文を作ったり編集したりすることもあります。文字の装飾だけ準備したり、写真を当てはめてみたりもします。

だいたい起こし終えたら、それをマスターとしてとっておいて、コピーしたもので初稿を作ります。マスターは「流れ・雰囲気・空気感」を確認するために使うことがたまーにありますが、いったん起こしてしまったらもう用済みである場合が多いです。起こしてはみたものの使わないところはたくさんあって、ばっさりカットしちゃうし、全部起こすのって無駄かもな、とふと思う場面もありますが、それでも「そこは使わない」という記憶は残るので無駄とは言い切れない気がしています。

取材当日に「メモを取るよりも表情を追ったり盛り上がりポイントでじっくり話を聞いたりする」方が良い感じに流れていく場合があり、そういう時私は「そもそもメモが取れない」状態になってしまう。合いの手やツッコミ、質問なども、メモを作りつつやるのは難しいのでした(でもできる人もいる! すごい!)。

最近の音声録音体制

取材をするようになったかなり初期の頃に、ICレコーダーのスイッチを入れたつもりが入っていなかった……!という事態に見舞われて以来、ICレコーダーとiPhoneのボイスメモの2台で冗長化してきました。そのトラブルの時は、同席していた同僚が録音したものを使わせてもらいました。

しばらくめちゃくちゃ怖くて、取材中に1台のICレコーダーのRECのランプや残り電池をそっと(しかし何回も)確認するなどしていたのですが、そんな些事で集中できなくなるのは本末転倒だとある日思い直し、iPhoneも使って気軽に録音するスタイルに変更。バックアップがあることで、「とっさに今聞き直したいけどiPhoneしか手元にない」(そんな状態あるのかわからないですが)時でもさくっと聞けます。

ICレコーダーそのものは長く使っているオリンパスのボイストレックシリーズのもので、何の不足もなかったのですが、最新のICレコーダーの性能がかなりよいと知りソニー製のものもうっかり買ってしまいました。せっかく手に入れたので、今はよほど取材時間が少ない時以外は、3台でやるようにしています。ソニーのICレコーダーはサブというより「本当に電池がない、これは詰んだ」という時の予備扱いのようなイメージです。ついでに、2台あると他の人が必要になった時にすぐに貸し出せて、そういう点でも冗長化できているといえそうです。

だいたいこれ1台で済むはずの、私が使っているボイストレックのICレコーダー↓

石橋を叩きすぎている気はするけど

これまで「フルで文字起こしする時間はどう頑張っても実時間以上かかる……!」と、何回か試行錯誤もしましたが、どうしてもニュアンスの再現で引っかかったり、話と話のつながりが見えなくなったりして、結局全部聞き直しちゃったよ……ということもありました。「壮絶に遠回りかもしれないけど、全部起こしてそこから再構成するとやりやすい」という自分のやり方を紹介させていただきました。

明日12/15の記事は

明日の書き手と編み手の Advent Calendar 2019は、安田理央id:rioysd)さんです! 安田さんのブログの文章が大好きなのでとても楽しみです。

adventar.org