「冪等性Tシャツ」から生まれてしまった会話

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ふとしたきっかけでこの「冪等性ロングスリーブTシャツ」を買い、好んで着ている。

エンジニア向けイベントに関連するX(Twitter)での会話の中で発見したものだったので、基本的には「冪等性(べきとうせい)」が通じるエンジニア向けイベントにしか着ていかないつもりだった。しかし、あまり長袖Tシャツを持っていないので、気候に合う日には「まあいいか」と思って着て外出している。

昨日はたまたま、東京都薬用植物園(東京都小平市)まで出向き、開催中の「ケシのパネル展」(4/22~5/15)を見に行った。ものがものだけに、話しかけられない雰囲気にしたいなと思って、わざと冪等性Tシャツを着た。天候的にもちょうどよかった。

それなのに、西武拝島線で最寄りである東大和市駅まであと一駅というところで、発車直前に列車に飛び込んできたお姉さんに「この電車、本川越まで行きますか?」と尋ねられてしまった。車内には運悪く人が少なくて、声を一番掛けやすい距離だったのが私だったのだと思う。全く土地勘のない私は「すみません、詳しく知らなくて……」と返した。お姉さんはお礼を言って飛び降りていった。

東大和市駅に着き、東京都薬用植物園に入った。ちょうどよいお天気だったからか、そこそこ人出があった。

一番の目的であった「ケシのパネル展」とケシの花々の展示はとても面白かった。あへん法により栽培が禁じられているケシと、規制されていないケシの仲間がそれぞれ試験区で栽培されているのだけど、私には違いが全くわからなかった。その辺の草むらで普通に花が咲いていたら「きれいだな~」くらいにしか思わないかもしれない。よくケシの栽培で逮捕される人のことがニュースになるけれど、見るたびに「よく違いがわかるな……」と思ってしまう。写真パネルでは「葉のふちがぎざぎざのものとそうでないもの」で見分ける旨説明がされていたけど、全く見分けられる自信がない。

他に植わっている植物などを見て回った。今が見頃ではない草花や木などもあるので、春夏秋冬それぞれで来てみたら楽しいだろうな、などと考えた。植物に全く詳しくない私から見ると「花が咲いているか咲いていないか」「有毒かそうでないか」くらいしか理解できないのだ。それでもたくさんの種類が集まって分類されている様子は楽しかった。

園内には「草星舎」という建物があり、書籍やお茶、雑貨、苗などが売られている。

ふれあいガーデン草星舎

せっかくなので何かお土産を買って帰ろうと思って、薬草の本をぱらぱらと眺めたり、ハーブティーのパッケージを見たりした。そして、木のお皿と、近所の作業所で作られているクッキーと、小さな手織りの袋を2つ、レジに持っていった。

お会計が終わった時、お店の人に不意に話しかけられた。「母の日なのか、買っていかれる方が多いんですよ」

私は「私は雑貨が好きでして」と返した。ごく普通の会話だ。

「個性的なものを身につけていらっしゃいますね」

そういえば私は、冪等性Tシャツを着て、

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スーパーカブ浮世絵風サコッシュを提げ、カメラ用リュックを背負っていた。そりゃ個性的だ。何も考えずに組み合わせてきてしまったが、怪しさ全開である。

「コンピュータ関連用語で、べきとうせいっていう言葉があるんですけど、その冪等性という言葉を使ってTシャツを作った方がいて、それがとても気に入って買ってみたんですが、確かにちょっと変ですよね、漢字ばかりですし」

私は焦った。そんな私の様子を気にせず、その方は続けた。

「ちょっとメモを取らせてもらってもいいですか? 冪、等、性って書くんですね。うちの息子がそういう言葉を好きなんです」

「あっコンピュータ関連の言葉で使うようなので理系でしたらご存じかもしれません」

「そうなんです、大学で理系のことをやっているので、聞いてみようと思います」

なぜ冪等性でここまで会話が広がったのか。メモまで書かれてしまった。草星舎で行われているさまざまなイベントがあり、よかったらぜひ参加してほしいと、ご案内までいただいてしまった。

どうしてこうなった。

家で食べたクッキーは美味しかった。